他人の人生

きわめて個人的なこと

おちてく

あっという間だけど激しくない時間、少しだけ高鳴るけれどリラックスした夜だった。林真理子風に言うのならば、今日のこれは「デイト」だったのだと思う。待ち合わせまで一時間、自分はまだ約束のために髪を巻くことができると気付いた瞬間に急に照れが襲ってきた。別にそういうのじゃないのに。そういうのじゃないのに、化粧下地を変えたその日に顔が変わったことに気付いてくれたのが想像以上に嬉しくて、多分分かりやすく顔が喜んでしまっていただろうなと思う。

異性と二人きりという状況がとてつもなく苦手だ。流れでそうなってしまった場合はある程度は大丈夫だけど、約束になると最悪だ。誘われた瞬間にシャットアウトしたくなる。どうにか口実をつくって逃げたくなる。相手がどうこうではなく、そういう状況そのものが苦手なのだと思う。

でも、今夜のデイトは、大丈夫だった。大丈夫、というのは私の中ではとても大きなことだ。すんなり時は過ぎた。終始穏やかな気持ちで、あ、これ、何かあと一押しあればいつか付き合うのかもしれないと思った。でもきっとこのままだろうなとも思った。簡単に言えば今の時点では利害関係が一致しているのだ。私は寂しい。相手もきっと寂しい。たまに一緒にいるだけの相手がいることで生きている実感につながる、みたいな、そんな関係。良くも悪くも嘘がない人だから、私も無駄な嘘をついたり繕ったりする必要がない。楽だ。それだけ。それだけでありたい。もうこの先に男とか女とか好きとか嫌いとか将来とか現実とか見たくない。

私は話し相手が欲しい。優しくされたい。でも付き合ったり体の関係になったりはしたくない。そこまで踏み込まれるのは怖い。浅瀬でパチャパチャやりたい。一人じゃない実感が欲しい。ずっと正直でいたい。良い人ぶらずに、取り繕わずに、可愛いふりせずに、素で話せる相手が欲しかった。そんなの甘えだってわかっているし、私の望む「このまま」なんて実現しないこともよくわかっている。現にもう相手から欲しいものはほとんどもらってしまっている。私を根気よく褒めてくれる。私の言ったこと、好きなもの、ちゃんと覚えてくれている。些細な変化に気づいてくれる。私の「嫌」を察知してくれる。私が警戒心が強いことを理解してくれているから、距離のつめかたすら優しい。指一本触れない。ありったけの優しさ。泣きそうなくらい優しい。それはそれは優しい。ずーっともらってばかり。もらってばかりなのに「友達」とかおこがましいと思う。私が友達だと思っていても、実際にはただ相手に甘えているだけである可能性もかなり高い。そうやって勝手に相手に甘えるだけ甘えている状況をつくるのが怖い。そんなの良くない。

カッコ悪いな。ずっと迷っている自分がカッコ悪い。その気になればもっともっとちゃんとできるのに。もっともっと好きなところちゃんと言えるのに。もっともっと言葉で伝える努力もなんでもできるのに。でもそれをしてしまうことによって築いてきた色々が壊れるのが怖い。ずっと怖い。表情が変わらない相手が照れた瞬間をとらえて、でも気づかないふりした。人生一周目だから、なかなか人間力が上がらない。うまいことも言えない。私は何度こういう煮えきらない関わり合いを繰り返すのだろう。やれやれ。

自分の感情に振り回されて、近頃まともな文が書けなくなった。元々あまりまともじゃなかったけれど、さらに。「ずっとまともじゃないってわかってる」まともじゃない時、つまりいつも、この歌詞は私の心臓を泳いでいる。魚みたいにすうーっと心を横切る。頑張れば良いことあるよとは無責任に言えない。人には人のタイミングがあることも、それが重なったりぶつかったり上手くいったり壊れたりすることも知っている。割れた爪が戻らない。余裕ぶっていたいのに、予期せぬことばに対しては全くのベイビーになってしまってカッコ悪いな。ベイビーっていうのは最近の口癖。知っていくうちに分かってくる、だから最初から決めつけないようにする。出来るだけ。変わらないこの環境が心地よく感じている。でも、変わらないこの環境が生ぬるくもあって、選択肢があるものの答えを選ぶのがとても苦手。寂しがり屋のプロのあなたが羨ましいです。いつも会いたいです。楽して幸せになりたいです。今日も星が綺麗。星がいつもより近い。この星を誰と見れば、いまの「幸せ」は「もっともっと幸せ」になるのだろう。いまの「幸せ」が「私にとっての最高の幸せ」なのかもしれないのに、どうしてその先をその先を探したくなってしまうのだろう。おちてく。ふらふらしている。軸になるものが何もない。何がしたいのかも分からない。強いて言えば何もしたくない。自分の足で立っていたい。ぼんやり空を見上げる時間が欲しい。もう無邪気なままではいられない。そう言えば私は、今まで無邪気な私に出会ったことがない。一緒にいて寂しくない人、久しぶりな気がした。