他人の人生

きわめて個人的なこと

N33

誰もが好きそうな薄いラメ入りのピンクのネイル、調べてみたら、けっこう前に廃盤になってしまったらしい。かわいいと思われたくてこういう色を選んでいた時期もあれば、ただひたすら自分の好きな色を選んでいた時期もある。最近はずっとモスグリーンかゴールドにしていたので、気分転換にラメ入り薄ピンクを塗ったらなんだかとても似合わなかった。

 

中身がガサツで勝気で切れ味が良いことを気にしていて、外側でバランスをとるために制服はパンツではなくスカートをチョイスしているし、マスカラでまつ毛を伸ばすし、ピンクの小物を使う。でもそんなの全然意味がないって分かっている。人の気持ちがわからない、優しさの分量が人よりも少ない、相手の立場になって考えられない。少し立ち止まったときにいつも自分の優しくなさに辟易する。ドライだ。スーパードライ。冷たいとすら言われるし、自分でもなんとなくそう思う。

 

皆に好かれようなんて思っていない。優しさってよく分からない。自分にとっての当たり前が他の人の当たり前だとは思わない。ただ静かにひっそり生きていきたいだけなのに。全部共有したいとか過去のこと全て聞きたいとか個人的な話をしてほしいとか思わないし、私もしたくない。

 

私のことを聞かないでくれ。何も面白くない人間だし、言えそうなことなんてないし、ネタも持ち合わせていないし、好きなものも嫌いなものも特に理由はなくて、人にもそこまで興味なくて、ただぼんやりしているだけなんだよ。マイペースに人の話を聞いてへえ〜って思っているだけだよ。私は浅くて掘っても何も出てきやしないよ、だから深入りしないでね。悩みは相談するものだって決めつけないでね。ここまで約三十年、大した悩み相談をしてこなかったけれど、自分で消化して生きてこれたよ。寝たら忘れるんだよ。信頼していないとかではなく、私はそういう性格なんだよ。理解してとは言わないから、そういう人間もいるんだなって思ってくれたら嬉しいよ。

 

今夜は星が見えない。梅雨はいつあけるの?

誰とも交わさない言葉が夜に吸い込まれていく。

窓をあけて通り過ぎる電車の明かりを見ていた。ごめんね、私だって嫌だよ、自分のエネルギーが内にしか向いていないこと。これからどうあがいても変わりそうにないこと。