他人の人生

きわめて個人的なこと

フィクション

運動がしたい。健康的な生活をしたい。髪を染めたい。ふかふかの動物を撫でたい。ずっと布団の中でまるまっていたい。夜中に誰かと喋りたい。あの人の書くものが読みたい。もうきっと書かないんだろうな。どこでなにしてるんだろ。苦しんでないといいな。

 

夢で、昔すきだった人がピアノを弾いてくれた。やっぱりとてもよかった。はじめて出会った時もこの人はピアノを弾いていたなと思い出した。夢の中でも音って鮮やかに光るんだなと思った。もうきっと聴けないんだろうな。もう好きになることもないし。でもあの音をいつでも聴けないのは少しだけ惜しい。こういう思い出の残り香がたまに自分の存在を強くする。そのあと、夢で家が焼けた。映画みたいに爆発的に燃えていた。私は火がこわい。水もこわい。光もこわい。

 

愛って、一緒に地獄に落ちてくれることかもしれない。

 

励ましも慰めもなくていいから黙って隣にいて。それだけが人を救う夜がある。

 

しっちゃかめっちゃか。久しぶりに生きている希望が見出せない。楽しみなこともない。日々、何がたのしくて生きてるんだっけ。なんのために生まれて何をして生きるのかこたえられないなんてそんなのはいやだ。アンパンマンの歌詞に煽られたとしても、怒る元気もない。

 

心にのしかかる重みが日々積み重なっていって、なんだか笑顔もぎこちない。自分の力ではままならないことばかりで吸う酸素が少ない。多くは言えない。だけど吐いて楽になりたい。味方が欲しい。負の無限ループから抜け出すためには自分自身でどうにかしないといけないことはわかっているけれど、支えが欲しい。安心したい。ぎゅっとして、生きていることだけ確かめたい。

 

ゆっくりゆっくり息を吸う。だめ、やっぱり気持ち悪い。胃が痛い。吐きそう。すぐそこまできている涙を必死に堪える。大丈夫、話さなくても話しても理解されないから。同じ船に乗っているのはたった数人。舵を切るのは私。弱いところばかり見せても仕方ない。どうか倒れませんように。メンタルはどうにかするので、体力が途切れないように。タフでありたい。不運を笑えないところまで追い詰められている。自分が何に対してダメージを受けるのかがはっきりとわかった。あんなに人はひとりだと豪語しているのに、結局ひとりじゃ生きていけない。それを実感するたびに弱くなる。

 

愛されたい人間ばかりが集まって毒が蔓延する。

 

今日くらい甘やかしてよ。できればいつも甘やかしてよ。明日は3時起きらしいよ。笑っちゃう。早く寝ればいいのに、書かないとやってらんない。幸せそうな人が悪いわけではないのに、幸せそうな人もきれいな正論をニコニコとぶちかます人も陽のエネルギーで満ち溢れているものも全てがつらい。正しい健康的な優しさから目をそらしたい。

 

伸びたカップ麺。洗面所ですする。伸びた前髪。キッチンの壁に寄りかかって飲むインスタントコーヒー。ギリギリの夜明け。昨日みた悪夢。もやがかかった日々。きっと少しだけ疲れている。もう全部吹っ飛ばして夏になってしまえばいい。季節が飛ぶように巡って早く老いてすべてみどりの爽やかな風になってしまえばいい。生きているのって、人間にとってきっと不自然な形だ。そう思えば今の自分も少しだけ肯定できる。こんなのはじめからすべて、フィクションだ。