他人の人生

きわめて個人的なこと

やさしいひと

「優しい人」ってこの世の中に溢れていると思う。でも、「優しい人」ってどんな人なのか正直よく分からない。穏やかなのか、気遣いができるのか、丁寧なのか、他人に興味がないのか。思いやりと無関心は似ている。

 

たくさん心配なことがある。私は周囲の心配ばかりして自分のことを忘れてしまうからよくない。他人の人生、他人の人生、と心の中で繰り返しながらやり過ごす。私が不安になったり悩んだりしたところで何も解決しないんだし。みんな色々起こるよ、人間だもん。でもそれを全て私が抱えようとするのは違う。

 

全然悩み相談してくれないじゃん、と先輩が拗ねていて嬉し可愛かった。ずっと頼りにしている。ずっと背中を追いかけてきた。目指している姿が近い人だったと思う。信頼できると思った。気にかけてくれていることも分かっていた。不満げな先輩に、私、悩みないんですよね〜と言ってヘラヘラ笑ってみた。よくよく考えてみたけれど、本当に言えそうな悩みが一つもなかった。それは先輩が頼りないからだとか言いたくないとかいうわけではなくて、なんというか、言うほどのことなんて何もないなと思った、というただそれだけのことだ。

 

相手は変わらないよ、変わるのは自分。教えてくれたのは誰だっただろうか。

 

その時の一瞬の感情を生かすも殺すも自分次第で、それを言葉にしなければはじめから無かったものみたいになってしまう。未だに私はギブのつもりがテイクテイクテイク。もらってばかりの愛は惨めだ。優しい人は私をダメにする。優しくなくても私は勝手にダメになるけど。狂わずに人を好きになれる人、いるの?

不思議なことに、言葉にするともっと好きになるし、言葉にしなかったらやがて忘れる。言葉はこわい。本物にも偽物にもなる。嘘もまことも作り出せる。大人になってから気づきそうになる前に揉み消す感情が増えたなと思う。初期消火はお手のもの。

 

 

優しい人だ。ずっと一緒にいるとダメになっちゃいそうで、だからいつも深く息を吸うことができない。