他人の人生

きわめて個人的なこと

ナンについて

もう何年も前、当時の恋人と付き合い始めた頃、ドライブ中に質問大会をした。質問大会と言っても、「好きな食べ物は?」「きのこ派たけのこ派?」「真っ暗でも眠れる?小さいあかりが必要?」のような簡単な質問をするだけの、要するに「相手のことをより知ろう」的なコーナーだった。

いくつめかの質問で、私は、「ご飯とパンどっちが好き?」と聞いた。まじでどうでもいい質問だし、その日によって気分なんて変わるだろうし、まあ日本人だしご飯の方が食べる回数は多いだろうと予想はつくし、「朝はご飯派?パン派?」とか、そういう具体的な質問にすればよかったと今になっては思う。ただその時の私は、その場の流れとノリでそんなどうでもいい質問をしたのだ。

ご飯、と、相手は答えた。ふーん、じゃあ、ご飯とナンだったら?と私は返した。そうしたら、相手は突然ゲラゲラと笑い出した。そして言った、「ほんと面白いよね、そういうところが好きなんだよ」と。

え???

別にウケを狙ったわけでもない、ご飯とナンだったらまあご飯だろうとは思っていたけど、念のため聞いておこうと思って質問しただけで、こんなにウケてくれるとは夢にも思わなかった。その後も私が特に何も考えずに言ったこと・したことが何故か相手にとてもウケて、その度に私という人間が「面白い」と褒められた。

なんてことないエピソードだけど、私はたまにこのナンの話を思い出す。そして、人の価値観ってそれぞれなんだなと思う。ネガティブな感情が自分の中にドロドロと渦巻いて、自分って何故こんなにつまらなくてどうしようもなくて何にも持ってないんだろう、なんて落ち込んでしまう日もまだまだたくさんあるけれど、私以外の誰かが笑ってくれたことをふと思い出しては、少し強くなれる気がするのです。